名も高き流るる滝の音涼やかに なお聞こえけり心澄ませば(百人一首より)
滴塵040
本文
名も高き流るる滝の音涼やかに なお聞こえけり心澄ませば
(百人一首より)
形式 #短歌
カテゴリ #8.比喩・諷刺・諧謔・引用
ラベル  #音 #自然現象 #引用 #精神
キーワード #滝 #涼 #心澄ませば #名高き #自然 #百人一首
要点
滝の名声や規模よりも、心を澄ませて耳を傾けることで涼やかな音を味わう描写。
現代語訳
心を澄ませれば、名高い滝の流れる音は涼やかで、なお鮮明に聞こえる。
注釈
名も高き:有名な滝、または象徴的な存在。具体的には名古曽の滝。
名も高き流るる滝の音:有名な滝の音。「音に聞く…」という慣用的な表現。
なお聞こえけり:今もなお聞こえること。
心澄ませば:精神を集中させることによる感覚の深まり。煩悩を離れた状態になれば。
百人一首:55番大納言公任の「滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ」を踏まえている。
解説
自然と精神の調和を描く短歌。滝の名声ではなく、自らの心を澄ますことで感得する美を重視。自然現象の音を通じて精神性や観照の境地を表現する。
深掘り_嵯峨
この歌は、外部の音が内面の清浄さと深く結びついていることを示しています。
滝の音という「真理の響き」は、騒がしい日常の中では聞こえませんが、「心澄ませば」、つまり坐禅や瞑想によって心を静めることで、再び聞こえてくるのです。
これは、真理は常にそこに存在している(滴塵001)が、私たちの心がそれを遮っているという真理を、「音」という聴覚的なモチーフで表しています。「清らかな心」という内なる準備があってこそ、外部の真理は受け入れられるという、悟りのプロセスを示唆しています。